少子高齢化に伴い、企業の後継者不足は深刻化しています。クリニックにおいても、経営者の高齢化と後継者不足の傾向は避けられないのが現状です。加えて社会保障費の負担増や医療制度改革、また人材の確保など業界特有の課題もあり、収益減少、赤字経営を余儀なくされるクリニックが増えつつあります。
クリニックは地域医療を支える役割を果たしています。地域に及ぼす影響を最小限にとどめるためにも、事業の継続を目指し、事業承継を検討するケースが増加傾向にあります。
日本では、中小企業と同様に、病院・クリニック業界でも経営者の高齢化・後継者不足が進んでいます。
厚生労働省による2022年度の統計によると、病院の開設者・医療法人代表者の平均年齢は64.9歳、診療所の開設者・法人代表者の平均年齢は62.5歳と高い水準です。
また帝国データバンクによる後継者不在率の調査によると、病院・診療所は65.3%と全業種の中でも2番目に高く、全体の平均53.9%より10ポイント以上高い数値となっています。
経営者の高齢化・後継者不足を受け、病院・クリニック業界では実際に休廃業・解散件数が増加しています。
厚生労働省の調査によると、令和3年10月~令和4年9月は休廃業・解散が7,281件確認されております。
地域医療体制の再編や医療環境の変化により、病院経営環境は今後も不透明な状況が続くとみられます。
病院・クリニックの現場では、医師や看護師といった医療従事者の人手不足も深刻です。
医療現場では、医療法において人員配置基準が定められているため、入院患者数や入所者数に対して定められた必要配置人数が確保できなければ業務を縮小せざるを得ません。
とくに看護師については、看護基準の改定により7対1看護の基準を満たしていると診療報酬が高くなることから、採用競争が激化しています。
その他、医療従事者の不足の原因としては、高齢化社会における需要の増加に追いつかないことや職場環境の悪化などが挙げられます。
経営を安定させ、職場環境の改善・医療従事者の人員確保を進めることは、医療業界の大きな課題と言えるでしょう。
医業承継の中で最も多いものが親族間承継で、勇退される院長の職を医師の資格を持つ息子や娘、甥、姪などの親族に引き継がせる方法です。
個人のクリニックの場合で相続する場合は、譲る側の親がまだ生きているうちに承継を行う「生前の医業承継」と譲り手である親が亡くなってしまってからクリニックの承継を行う「相続の医業承継」の2つに分けることができます。
前者は贈与として行われる場合が多いのに対して、後者は財産の相続という形で承継するのが特徴です。
相続税や贈与税に関しては税理士などに確認する必要があります。
「親族以外」の役員・従業員いわゆる「番頭さん」に承継する方法です。経営者としての能力のある人材を見極めて承継することができること、病院・クリニックで長期間働いてきた従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいといったメリットがあります。
親族内承継の減少を補うように、従業員承継の割合は近年、急増しています。問題となるのは承継者の資金力になりますが、早期に承継の計画を立てられるという点で資金の問題も解決可能です。
番頭承継を行う場合の重要なポイントとして、親族株主の了解を得ることが挙げられます。現院長(理事長)のリーダーシップのもとで早期に親族間の調整を行い、関係者全員の同意と協力を取り付け、事後に紛争が生じないよう道筋を付けておくことが大切です。
近年では第三者承継が増加しております。
第三者承継は譲渡側と承継側どちらもまずは相手を探すところからのスタートとなり、医療機関を売却する金銭的なやりとりが譲渡側と承継側で発生するため、M&Aの仲介会社や承継の専門家などに依頼することになります。
これらの承継はクリニックが個人のクリニックだけでなく、医療法人である場合でも手続き自体に大きな違いはありませんが、医療法人の場合では、2018(平成19)年4月以前に設立された「持分あり医療法人」と2018(平成19)年以降に設立された「出資持分なし医療法人」とでは、そのスキームは異なりますので注意が必要です。
病院・クリニック業界では、経営者が高齢化する中、後継者の不在により存続が困難なケースが増加しています。
医業承継であれば専門の仲介会社の支援を受けて譲渡先を探せるため、後継者候補が身近にいない場合でも事業承継が実現でき、病院・クリニックの存続が可能です。
事業を承継するひとつの手段として、後継者問題に悩む病院・クリニックに選ばれています。
地域住民にとって病院・クリニックは必要不可欠な存在であり、簡単になくせるものではありません。
とくに、病院・クリニックが不足している地域では、1つの病院やクリニックが廃院しただけでも地域の人々に大きな影響を及ぼします。
事業承継をひとつの手段として採用することで、地域医療を維持できる可能性が広がります。
クリニックや規模の小さな病院では経営基盤が安定しづらく、職場環境の改善やより良い医療の提供が難しいケースもあります。
もし、医業承継が成功して大規模な医療法人の傘下に入ることができれば経営基盤の安定が図れ、さらにグループ内で連携して医療提供できるといったメリットも得られます。
事業の存続が困難な場合、そのまま廃業してしまうと医師や看護師、事務スタッフの雇用継続ができなくなってしまいます。
しかし、医業承継で事業を承継できれば、在籍する従業員の雇用確保が実現できます。
医業承継により病院・クリニックを売却することで、売り手の経営者は売却益を得られます。
引退する経営者は高齢な場合も多く、獲得した利益は引退後の生活資金に利用が可能です。
医業承継による経営方針の変更は、必ずしもサービスの質の向上を意味するわけではありません。新たな経営体制のもとで、適切な人員配置や病床の確保が十分に行われない場合、サービスの質が低下する可能性もあります。
また、既存の従業員と新しい体制の従業員間での連携不足や、引き継ぎの不備が生じると、患者への影響や業務の効率性に問題が発生する可能性があります。
病院・医療法人の医業承継は、株式会社の株式譲渡に比べると、手続きが複雑になるデメリットがあります。例えば、病院・医療法人の賃貸契約は、譲渡側の病院・医療法人でいったん解約して譲受側が新たに契約します。その際に大家から償却費を請求されたり、不動産会社に仲介手数料を請求されたりする場合もあります。
また、従業員との雇用契約を改めて締結し、ベッドの申請も新たに行わなければなりません。ベッドの申請は、基準病床数を超えていた場合は、申請が保留されてしまうので注意が必要です。
ベッド数が基準病床数を超えている場合は、事前に都道府県と相談しながら医業承継を進めていく必要があります。
病院・医療法人を医業承継すると、譲渡側に法人税や消費税が発生します。医業承継の税金は、株式会社の株式譲渡より高く、資金効率が悪くなるデメリットがあります。
譲渡側の院長が土地を代々引き継いでいる場合は、含み益が非常に大きくなっていることもあるでしょう。営業権や生命保険の解約金なども、予想以上の税金が発生する場合があるので注意が必要です。
医業承継は、予想外のトラブルにより予定よりも長引くことがあります。交渉過程での意見の相違や議決権の行使、価格設定に関する折り合いがつかない場合など、さまざまな要因が影響します。
複雑な交渉や法的手続き、各種調整に一定の時間を必要があり、長期間における計画と準備が求められます。
近年、医師・看護師といった医療従事者の不足が問題となっている中、医業承継によって売り手の病院の医師・看護師等を引き継ぐことができるのは大きなメリットと言えます。
とくに看護師数を確保できると、診療報酬上のメリットも生じます。
スタッフを新規で募集しても、優秀な人材が得られるとは限らず、即戦力の人材を確保できるのは魅力的でしょう。
新しく病院・クリニックを立ち上げるには、設備投資や人材確保などに非常に多くの費用が必要です。
一方で医業承継により既存の病院・クリニックを承継した場合には、売り手の設備や患者などを引き継ぎ、コストや手間を抑えて新しい拠点を手に入れられます。
また、既存の病院・クリニックには地盤ができているため、承継後は円滑に事業を展開できるのも魅力と言えます。
医業承継により今まで対応していなかった診療領域を確保できれば、診療領域を拡大し、病院・クリニックとしての機能も多角的に展開できます。
規模の拡大や、市場における存在感の強化にもつながり、経営上の大きなメリットとなるでしょう。
自院で保有している診療領域と同じ領域の病院・クリニックを医業承継した場合には、経験豊富な医療スタッフ・専門の設備などを確保でき、専門性の強化につながります。
すでに自院で取り組んでいる領域でもあるので、承継後の展開をスムーズに進めやすいのも魅力です。
病院・クリニックの新設時には、該当地域の都道府県知事などから許可を得た上で、医療計画に定められた病床規制に則って開設しなければなりません。
定められた基準病床数を超えた場合には許可が下りず、新規参入・事業拡大の妨げとなるケースもあります。
しかし、医業承継によって既存の病院・クリニックを承継すれば、規制を回避して比較的容易に病床を増やせます。
医業承継できる物件自体が多く存在しないことから、限られた物件から選ばなくてはなりません。
少しでもいい物件に巡り合うためにも、信頼できる仲介業者を見つけて、物件が出るたびにスピーディに連絡してもらえるようにしましょう。
せっかく見つけた理想の立地や物件だとしても、いざレイアウト変更を検討する際、柱やパイプスペース等によってレイアウトが理想のものにならない場合があります。
また、大きく変更しようと思ったらそれなりの資金が必要になる場合があります。
老朽化に伴うリニューアル工事費などで出費がかさむ場合があります。
医業承継への対価は、そのことを加味した金額にしてもらえるよう交渉しましょう。
また、前院長に支払う、譲渡の対価が相場より大きい場合があります。その場合も、納得いく金額で契約できるよう交渉することが望ましいです。
前院長の診療方針、コンセプト、ターゲットと著しく異なる場合などは、患者やスタッフからいい印象を抱いてもらえないことも考えられます。
自分の理想の医療を追求することを優先したいなら、患者・スタッフに対して自身の考えをしっかりと伝えて納得してもらうことも必要になってくるでしょう。
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病院・クリニックの様々なフェーズでの課題に対し、弊社の専門のチームがコンサルティングや支援サービスを提供いたします。課題に対し、グループ内税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士等の専門家とともに、成功のゴールまで一緒に走り続けます。
初めの一歩は、成功への第一歩です。
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